腰が痛いのに、なぜ「腰だけ」を揉まないのか
「腰が痛い=腰を揉む」
これはとても自然な発想です。肩が凝れば肩を揉む、腰が痛ければ腰を揉む。
多くの方がそう考えますし、実際それで楽になることもあります。
当院の整体でも、施術の中で腰を直接ほぐすことはあります。
ただし、慢性的な腰痛や、何度も繰り返す腰痛など、腰だけを揉み続けても腰痛は改善しきれないケースが多くあります。
これは、腰に負担をかけている別の場所が、腰痛の原因になっていることが多いためです。
腰は“結果”であって“原因”とは限らない
腰は、体の中で非常に「頑張らされやすい場所」です。
立つ、歩く、座る、物を持つ。
日常動作の多くで、腰は無意識に負担を引き受けています。
つまり腰痛とは
「腰が限界まで代わりに頑張った結果」
として起きている場合が少なくありません。
このようなときに本当に見るべきなのは、
・腰の代わりに働くべきだった筋肉
・腰に負担を集めてしまった身体の使い方
です。
その代表例のひとつが、「腓骨筋(ひこつきん)」です。

腓骨筋とは何か
腓骨筋は、すねの外側にある筋肉で、
・長腓骨筋
・短腓骨筋
の2つをまとめて指します。
この筋肉は
・足首を安定させる
・歩行時のバランスを取る
・体重移動をスムーズにする
といった役割を担っています。
一見、腰とは直接関係なさそうに思える筋肉ですが、
実は腰痛と深く関係しています。
腓骨筋が硬くなると、なぜ腰に影響するのか
腓骨筋が硬くなると、足首の動きが不安定になります。
すると、地面からの衝撃や体重移動を足で受け止めきれず、その負担が上へと逃げていきます。
足 → 膝 → 股関節 → 骨盤 → 腰
この流れの中で、腰は最後に負担を受け取る場所になります。
さらに腓骨筋は、坐骨神経から分岐した神経(浅腓骨神経)に支配されており、腰から脚へつながる神経の流れの一部でもあります。

その結果、
・腰からお尻、脚にかけての重だるさ
・坐骨神経痛のような違和感
・立っていると悪化する腰痛
といった症状につながることがあります。
また、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などで、坐骨神経が圧迫されると、痛みや痺れは腰だけにとどまりません。
臀部、太もも、下腿外側、そして腓骨筋が支配する領域にまで症状が広がることがあります。
このような場合、原因そのものは腰椎にありますが、症状が出ている部位では
・筋緊張による血流低下
・神経周囲の循環不良
・防御的な筋のこわばり
が同時に起きています。
このタイプの腰痛では、腰をほぐすこと自体は無駄ではありませんが、それだけでは足りないのです。
そのため、腓骨筋の緊張を和らげ、血流や組織の余白を整えることで、
痛みや痺れが軽減するケースがあります。
これは、ヘルニアや狭窄症を治すという意味ではありません。
神経を直接触ることはできませんが、神経の周囲環境を整えることで、症状が出にくい状態を作ることは可能です。
「知識があるからこそ」触る順番が違う
当院では、腰痛の方に対しても、
腰を含めて全体を見たうえで、必要な場所にアプローチします。
腰の筋肉を緩めつつ、
・腓骨筋の緊張
・立ち方や体重のかかり方
・足首の動き
などを確認し、腰に負担をかけている要因があれば、下肢からも調整します。
腰を触らないのではなく、
「腰だけ」に固執しないという考え方です。
神経そのものを直接触ることはできません。
しかし、神経の周りの血流や余白を邪魔している筋肉は整えられます。
それによって「痛みが出にくい環境」を作ることが、整体師としてできることだと考えています。
腰痛は「知識の差」が結果を分ける
腰痛の原因は非常に多く、正直、すべてを一度に説明することはできません。
だからこそ今回は、あえて腓骨筋に注目してお話しました。
次回は、同じく腰痛と深く関係する
「腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)」について、さらに詳しく書く予定です。
「腰が痛いのに、腰以外も整える理由」
それは、知識があるからこその判断であり、手技です。
腰を揉んでも改善しない、
原因がはっきりしない腰痛が続いている。
そんな方は、腰以外に目を向ける必要があるサインかもしれません。
※症状の強さや進行状況によっては、医療機関での診断・治療が優先となる場合があります。
















